あるカリスマ美容師さんが、こんな話をしてくれました。

働き始めた頃、四六時中笑顔でいるようにしていたそうです。

お客様の前でも、スタッフの前でも、常に感じ良く見られるように、と。

するとある日、「家に帰っても、自分が笑っているのか分からなくなった」と。

笑顔が「動作」ではなく、「状態」になっていたのかもしれません。

また、こんな方もいらっしゃいました。

「私も娘も、口が大きいんです」

そうおっしゃっていましたが、お顔を拝見すると、口角が常に横に引かれた状態で固定されていました。

理由をうかがうと、

「女の子は、いつもニコニコして、夫を支えなさい」

そう教えられて育ち、ご自身もまた、娘さんにそう伝えてきたとのこと。

長年の「正しい笑顔」が、表情の癖として残っていたのです。

施術で力みが抜けたとき、その方の口元は、思っていたよりもずっと自然な大きさでした。

口が大きかったのではなく、横に引き続けていただけだったのです。

笑顔は駄目なの?

笑顔は悪いものではありません。

本心からの笑いは、むしろ顔をゆるめます。

けれど、笑顔を保ち続けると、それは固定になります。

出る → ゆるむ → 戻る。

この循環があってこそ、巡ります。

けれど、「出る → 固定する → 保持する」になると、筋肉は少しずつ疲れていきます。

口元が支えきれなくなり、たるみを感じることもある。

そして時に、「皮膚を切るしかないのでは」と追い詰められてしまうことも。

どうしたらいい?

真顔をしていてもいい。

無表情の時間があってもいい。

笑顔は、頑張って保つものではなく、自然に生まれて、自然に戻るものです。

ずっと笑っていなくていい。

顔は、課された役割を降ろしたときに、本来の位置に戻っていきます。