こうして、「凝りがほぐれること」「むくみが取れること」を指針に、クリームの試作が始まりました。

私が知りたかったのは、肌がきれいに見えるかどうかではありません。

これを塗った身体は、施術しやすくなるのか。

そこが一番重要でした。

試作品ができるたびに、実際の施術で使ってみました。

すると、塗ったときと塗らないときで、お客様が感じる痛みがかなり違いました。

「これ、麻酔ですか?」

と言われたり、

「合法ですか?😅 麻薬じゃないですよね?」

と言われたり。

もちろん、麻酔でも麻薬でもありません。

当時、試作品を使っていたのは、長く通ってくださっているリピーター様が中心でした。

すでに施術を重ね、セルライトもかなり少なくなっている方たちです。

そのため、凝りやむくみがほどけたときの違いも、かなり劇的に感じられたのだと思います。

新規のお客様など、セルライトがまだ多い方の場合には、現在でも多少の痛みを感じることはあります。

それでも、セルライトの質や量、施術のしやすさはずいぶん違います。

私としては、

ああ、作りたかったものができそうだ。

という感覚でした。

ところが、私以上に試作品を気に入ったのが、リピーター様たちでした。

「これ、いつ発売するんですか?」

「まだです」

「量り売りでいいから、先に分けてもらえませんか?」

まだ商品にもなっていないのに、発売を待ってくださる方が出てきました。

「私、自惚れちゃうな」

試作品は、もちろん私自身も使っていました。

良さそうなものをしばらく塗っていたある日。

鏡を見ていて、なんとなく思ったのです。

最近、顔の調子がいい。

表情もなんだかいい感じ。

そして、「これは自惚れちゃうな」と思いました。

だったら、これは「自惚れクリーム」だな、と。

ただ、さすがに商品名をそのまま「自惚れクリーム」にするのはためらいがありました。

なんというか、明治や大正時代っぽいし。

もう少し化粧品らしい、おしゃれな名前を考えました。

ところが、その名前をOEM会社に出したところ、商品の性能を暗示するような名称になるので、やめた方がいいのではないか、と差し戻されました。

さて、困りました。

もう他に思いつきません。

ちなみに、そのとき考えたおしゃれな名前が何だったのか、今となっては覚えていません。

忘れてしまうくらいなので、大した名前ではなかったのでしょう(笑)。

「もう、自惚れクリームにするか・・・でも、やっぱり大正時代っぽいしなー」

そんなことを言っていたら、当時のスタッフが言いました。

「自惚れの頭文字を取って、UBクリームでいいじゃないですか」

うぬぼれ=Unu BoreでU・B。

あ、それでいいか。

こうして、ずいぶん軽いノリで、

UB CREAM

という名前が決まりました。

後に、ある使用者様から、

「肌が変わっていくから、ウブ肌のUBだと思っていました」と言われたこともあります。

なるほど。

それも悪くありませんね。

大きすぎず、小さすぎず

名前が決まったら、今度は商品としての形を決めていきます。

私は当初、もっと大きなサイズを作りたいと思っていました。

250gくらい。

もともと身体にも使ってほしいクリームです。

それならたっぷり入っていた方がいいと思ったのです。

でも、社員から、「それだと、身体用のクリームを顔にも塗る、という印象になってしまう」と言われました。

確かに250gのクリームがどんと置いてあったら、一般的にはボディクリームに見えるでしょう。

容量が増えれば、当然販売価格も上がります。

では、他の顔用クリームの一般的なサイズである50gくらいにするのは私は嫌でした。

うちのお客様なら、絶対にもったいながってしまう。

高そうなクリームが50gしか入っていなかったら、ちびちび顔だけに塗って終わる。

首や鎖骨にも塗ってくださいと言っても、

「もったいないから」と塗らない姿が目に浮かびます。

それでは、このクリームを作った意味がありません。

顔用の化粧品としても違和感がなく、でも首や鎖骨、身体にも手を伸ばせるくらいの量。

そうして、現在の100gになりました。

スパチュラは、きっとなくす

容器については、私はチューブを希望しました。

理由は、とても単純です。

その方が使いやすいから。

私は、誰でも使いやすいものを作りたかったのです。

チューブならば、忙しいときでも、疲れているときでも、蓋を開けて出して塗るだけ。

一般的な蓋と入れ物が別々のクリームは見た目もオシャレです。

でも瓶の場合は、瓶をうっかり落として、中身をぶちまけてしまったり、

付属のスパチュラがいつの間にか行方不明になって、結局指ですくって使ったり。

そういう不器用でズボラな人間がいることを、私はよく知っています。

なぜなら、私もそうだからです。

第1話に書いた、

「クリームを塗るくらいなら、できますか?」

「はい! クリームなら塗れます!」

というやり取り。

せっかく「塗るだけ」ならできると言っているのに、毎回スパチュラを出して、きれいにすくって、またスパチュラを洗って・・・という商品にしてしまったら意味がありません。

使う人が商品に合わせるのではなく、商品を使う人に合わせたい。

チューブにしたのは、そんな単純な理由でした。

男性の洗面台にも置けるもの

デザインも、いかにも女性向けの化粧品にはしませんでした。

華やかで、かわいくて、

「女性のための美容クリームです」

と一目で分かるようなものではなく、

できるだけシンプルで、ユニセックスなものに。

いつか、一人暮らしの男性がこのクリームを使うことがあるかもしれない。

そのとき洗面台に置いてあっても、なんとなく気恥ずかしくならないものにしたかったのです。

だからUBクリームは、少し化粧品らしくない姿をしています。

当時、本当に男性が使うようになるのかは分かりませんでした。

でも後になって、

「私が海外出張している間に夫が使っていたそうで、帰ってきたら顔が変わっていました」

なんて話を聞くことになります。

作っているときには想像でしかなかった使い方を、後からお客様たちが次々と現実にしていきました。

でも、それはもう少し先のお話です。

そして、UBクリームができた

こうして、

凝りやむくみをほどき、施術と施術の間を支えるもの。

ズボラな人でも続けられるもの。

顔だけで大事にしまい込まず、首や鎖骨、身体にも使えるもの。

女性だけでなく、誰の洗面台に置いてあってもおかしくないもの。

少しずつ形が決まり、

ようやくUBクリームが商品になりました。

発売前から、

「いつ発売するんですか?」

「量り売りでもいいから欲しい」

と待ってくださっていた方もいます。

だから私も、

少なくとも、売れなくて困ることはないだろう。

そんなふうに思っていた気がします。

ですから、発売後は私のお客様は皆様買ってくださいました。

ただ、私はここで一つ、大事なことを分かっていませんでした。

3000本という数の大きさです。

サロンのお客様に100本や200本売れたところで、まだまだ在庫はあります。

お客様に人気があることと、3000本の商品がなくなっていくことは、まったく別の話でした。

サロンのバックヤードには、UBクリームの入った段ボール箱の山。

その山を見て、一番心配していたのが社長でした。

「このクリーム、どうするんだ?」

後に、大晦日も元旦も休まず、このクリームを発送することになる本人が、です。

この頃のUBクリームは、マン・ダムールのお客様には愛されている。

でも、サロンの外ではほとんど知られていない商品でした。

もちろん、その頃は誰も知りません。

3000本という数が動き始めるのは、もう少し後のことです。