UBクリームの誕生と、その後。 03│まだ、このクリームを知らなかった
UBクリームが完成して、私がまず確信したことがありました。
UBクリームを塗って施術すると、とても施術がしやすい。
これはもう、私の中では疑いようがありませんでした。
試作品の段階から、塗ったときと塗らないときでは施術時の痛みがずいぶん違いましたし、発売後も、お客様の身体を触るたびにその違いを感じていました。
そしてUBクリームができたことで、私は少しずつ新規のお客様もお受けできるようになりました。
「5周り痩せたい」
その頃にいらしたお客様の一人に、
「5周り痩せたい」
という方がいました。
UBクリームも、とても真面目に塗ってくださる方でした。
施術をしていくと、本当にするすると変わっていきました。
ほぼ一回の施術ごとに一周りずつ。
そして5回ほどで、本当に最初の目標だった「5周り」を達成してしまいました。
すると、その方が言いました。
「しまった! 10周りって言っておけばよかった!」
いやいや。
「願い直せばいいんだよ」ということで、目標を変更。
結局、その方は10周りほど変わりました。
ご本人いわく、
「トトロから人間になりました」
とのことでした。
もちろん、これはその方の経過であって、UBクリームを塗れば誰でも同じようになる、という話ではありません。
ただ、私自身はこの頃には、
UBクリームで日常のコンディションを整えながら施術をすると、施術の進み方がずいぶん違うということを、かなりはっきり感じていました。
Sサイズになったら困る
別のお客様で、服のデザインとディレクションをされている方がいました。
ご自身でも、自分が作った服のモデルをされる方です。
その方の希望は、
「LサイズからMサイズになりたい」。
UBクリームを塗りながら施術を続けていると、希望していたMサイズには到達しました。
ところが、そのまま続けたらSサイズに入りそうな勢いです。
それでは困ります。
その方が作っている服は、おおむねM〜Lくらいのサイズ展開。
ご本人が自作の服のモデルをするのですから、Sサイズになってしまったら仕事上都合が悪い。
そこで、「もう十分でしょう」と、卒業になりました。
変われば変わるほどいい、というわけでもありません。
その人が行きたいところまで行ったら、それでいいのです。
「クリーム塗ってるから、次は2か月後で」
昔からのリピーター様たちにも変化がありました。
それまで月に一度くらい施術に来てくださっていた方たちに、私は、
「クリーム塗ってるから大丈夫。次は2か月後で」
と、来店頻度を落としてもらうようになりました。
サロン経営者として考えると、なかなかひどい話です。
せっかく毎月来てくださるお客様に、「来月は来なくていい」と言っているのですから。
でも、それがUBクリームを作った目的でもありました。
第1話で書いたように、そもそもの始まりは、
「先生の身体を空けるものを作りましょう」
だったのです。
そして2か月後。
以前の写真と比較して、お客様自身が、「これ、半年前の写真ですか?」と驚くくらい変わっていることがありました。
維持していた、というだけではありません。
私が施術していない間にも、身体が続きをしていたのです。
第1話で書いた、「三歩進んで、さらに一歩進む」という私が作りたかった状態が、少しずつ現実になっていました。
ところが、塗らない人もいる
その後、1年ほど勤めていたスタッフが辞め、新しいスタッフが入りました。
スタッフにはリラクゼーション出身者も多く、物販が得意な人ばかりではありません。
商品をおすすめして販売することそのものが苦手なスタッフもいました。
でも私には、UBクリームを塗ると施術がしやすいことが分かっています。
だったら、売ってもらうことを期待するより、最初から施術にクリームを付けてしまおう。
お客様に家で使っていただけば、次回のスタッフの施術も楽になるはずです。
ところが。
クリームをお渡ししても、塗らない方がいました。
その理由が分かったのは、後になって、そのスタッフが退職し、私がお客様を引き継いだときでした。
「気に入っているボディクリームがあるから、使っていませんでした」と言われたのです。
そして、「そんなに施術にとって大事なものだとは、分かっていませんでした」とも。
なるほど。
使いたくなかったのではありません。
使う意味が伝わっていなかったのです。
私にとってUBクリームは、すでに施術の一部でした。
でも、その背景を知らない人から見れば、ただのボディクリームにも見える。
良いものを作ることと、その良さが人に伝わることは、まったく別の話でした。
3000本、どうする?
UBクリームは、マン・ダムールの昔からのお客様にはとても好評でした。
皆さん普通に買ってくださいますし、自分からお友達に勧めてくださったり、Instagramで紹介してくださったりする方もいらしゃいました。
でも、いかんせん知名度がありません。
そして私たちは、UBクリームを3000本作っていました。
サロンのお客様に500本売れたところで、残りは2500本です。
この頃が、UBクリームの一番の低迷期だったと思います。
商品が悪いとは思っていませんでした。
施術室ではむしろ、「作ってよかった」と思うことばかりです。
でも、3000本はそう簡単には減らない。
母には、「売れ残ったら、私が買うよ」と言われました。
気持ちはありがたい。
でも、「いや、無理でしょ。さすがに」と思いました。
母一人にどうにかしてもらえる量ではありません(笑)。
なぜか、お客様の方が強気だった
ところが、昔からのリピーター様たちは、なぜか私たちよりずっと楽観的でした。
「こんな良いクリーム、女優さんとかが一言紹介したら、瞬く間に火がつくのにね」と言われたり、
「大企業にパクられないように、特許を取っておいた方がいいんじゃない?」と心配されたり。
売れるに決まってるじゃんというノリでした。
考えてみれば、リピーター様たちは試作品の頃からUBクリームを知っています。
塗ったときの施術も、塗らなかったときの施術も、自分の身体で経験しています。
だから、「これは、知られさえすれば売れる」
と、本気で思ってくださっていたのかもしれません。
作った本人より、お客様たちの方がこのクリームの将来を信じていた時期でした。
北海道から、また注文が来た
UBクリームが届いたのが2月。
その後、4月頃に施術の片手間にオンラインショップも作りました。
といっても、オンラインショップからの注文は最初はポツリ、ポツリと入る程度です。
そんな中、北海道から注文が入りました。
そして、しばらくすると、また同じ方から注文が入りました。
リピートです。
私は少し不思議に思いました。
誰だろう?
当時はサロンのお客様以外でUBクリームを買ってくださる方自体が、まだ珍しかったのです。
その後、その方からInstagramにメッセージをいただきました。
エステサロンのオーナーさんでした。
ご自身が敏感肌で使えない化粧品も多い中、UBクリームを使い、気に入ってくださったとのこと。
まだ最初の一本を使い切っていないのに、継続して使うのが楽しみだからと追加購入してくださっていました。
私はそれを読んで、
あ、評価してくれている人もいるんだ。
と思いました。
今考えると、ずいぶん呑気な感想です。
でも当時の私は、UBクリームを使って施術をすれば変化が大きいことは知っていました。
それは、自分の手で何度も確認していたからです。
一方で、
「母や叔母に使わせたら肌艶がすごく良くなった」
「遊びに来た母が気に入って持って帰ってしまって、なくなったからまた買ってきてと言われた」
「自分が海外出張している間に夫が使っていて、帰ったら顔が変わっていた」
そんな話をお客様から聞いても、
「へえ、本当。よかったね」
くらいでした。
私は、自分が見ていないものについては、なかなか判断しません。
ましてや、そんな話をそのまま発信したところで、嘘くさい宣伝に見えるだろうと思っていました。
それに当時の私は、サロンをこれ以上混ませたいとも思っていませんでした。
クリームは気に入ってもらいたい。
でも、
「このサロンにも行ってみたい」
と大勢に思われたら、それはそれで困る。
そんな状態でした。
だから、この北海道からの小さなリピート注文が、この先何かにつながるなんて考えてもいませんでした。
ただ、
マン・ダムールを知らない人が、自分で見つけて、自分で使って、もう一度買ってくれた。
それが、少し嬉しかった。
まだ3000本は、たくさん残っています。
UBクリームの知名度も、ほとんどありません。
そして何より、
作った私自身が、まだこのクリームのことを全部は分かっていませんでした。
私が知っていたのは、
「UBクリームを塗って施術すると、とても強い」ということ。
その頃すでに、サロンの外では別のことが起き始めていました。
それに私が気づくのは、もう少し後のことです。

